株式会社ヘラルボニー(本社:岩手県盛岡市、代表取締役Co-CEO:松田崇弥、松田文登、以下「ヘラルボニー」)は、公益財団法人日本ダウン症協会(以下「JDS」)と共同で、3月21日(金)の「世界ダウン症の日」に合わせた意見広告を発表しました。

ダウン症の原因となる染色体を除去できる可能性を示すというニュースが報じられました。研究そのものは将来の医療の可能性を広げるものかもしれません。
一方で、この報道に対する反応の中には、「可哀想な人が減る」「不幸な人は減るべきだ」といった声も見受けられました。これらの意見は必ずしも悪意から来ているわけではないかもしれませんが、このような無意識の偏見が個々人の生きづらさや社会との隔たりを生むことがあると考えています。
ヘラルボニーとJDSは、障害は個人の問題ではなく、社会全体の課題であると認識しています。しかし、今回の報道に対する「不幸な人は減るべき」という反応は、障害を個人の問題として捉えるものであり、障害のある人々は不幸せであるという認識を社会に広げる可能性があると考えました。
だからこそ、障害のある人に対する無意識の偏見に気づき、考えてもらう機会を提供したいと考え、意見広告を共同で発表することを決断しました。
ヘラルボニーとJDSは、障害の有無に関わらず、誰もが自分らしく幸せに生きられる社会の実現を目指します。
■コピー全文
「いつか『偏見』も、除去されますように。」
ダウン症の原因となる染色体を除去できる研究についてのニュースがありました。
そのニュースに対する反応の中には、
「可哀想な人が減るなんて素晴らしい」
「不幸な人は減るべきだ」
そんな声もありました。
でも、少し立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
ダウン症のある人は、本当に「可哀想な人」でしょうか。
ある調査では、ダウン症のある人の8割が、
「毎日幸せを感じる」と答えています。
無意識の「偏見」は、
ときに人と人の断絶や生きづらさを生む。
そんな「偏見」の除去は、
技術の力ではなく、人の心にしかできません。
障害のある人も、ない人も、互いを分かり合い、
自分らしい幸せな道を歩める社会を目指して。
いつか「偏見」も、除去されますように。
3.21は、世界ダウン症の日です。

■コピーに込めた想い
通常2本である21番目の染色体が、ほとんどのダウン症がある人たちに3本あることから、国際デーのひとつとして2012年より3月21日は「世界ダウン症の日」に国連により制定されました。
近年、ダウン症の原因となる染色体に関する研究が進んでいます。こうした中、「ダウン症の人の細胞から過剰な21番染色体を除去する手法が開発された」とのニュースが流れました。このニュースに対する世間の反応の中には、「可哀想な人が減るなんて素晴らしい」「不幸な人は減るべきだ」といった声がありました。
しかし、ダウン症のある人は本当に「不幸な人」なのでしょうか。
研究そのものは医学の進歩として意義を持ちますが、研究の公表内容によっては、障害を社会モデルではなく、医学モデル*1として捉えることを促し、優生思想に繋がりかねないとの懸念を抱いたことをきっかけに、本広告の制作に至りました。
厚生労働省による調査*2では、ダウン症のある人の8割が「毎日幸せを感じる」と回答しています。
障害があるから不幸であると判断することは、無意識の偏見だと私たちは考えます。
そういった偏見は技術で取り除けるものではなく、人の心にしか除去できません。
ヘラルボニーとJDSは、この意見広告を通じてダウン症への理解促進と、障害の有無に関わらず、誰もがその人個人として評価される社会の実現を目指します。
*1 医学モデルは、障害を医学的に診断された個人の問題と捉え、治療によって社会への適応を図る考え方です。一方、社会モデルは、障害による障壁の責任は個人ではなく社会にあると捉え、環境や制度の改善を重視します。2006年に国連で制定された「障害者権利条約」では、この社会モデルの考え方が反映されています。
*2 出典:小西郁生. 出生前診断における遺伝カウンセリングの実施体制及び支援体制のあり方に関する研究. 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究. 研究代表者 小西郁生. 平成27年度総括研究報告書」(厚生労働科学研究成果データベース)(https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/25251)
■掲載情報
掲載日:2025年3月21日(金)
媒体:東京新聞朝刊、中日新聞(三重県版)朝刊
■コメント
公益財団法人日本ダウン症協会 玉井浩代表理事
ダウン症の原因となる過剰な染色体の除去に関するニュースは、様々な受け取られ方をしています。これまで人類は医学の発展によりたくさんの恩恵を受けてきたことは事実ですが、それは受け容れる社会の側の理解と準備が整っていたからです。ところが、現代の自然科学の進歩は目覚ましく、生命倫理の議論や社会の理解・共感が追いついていない状況があります。自然科学に基づく医学モデルは、社会科学に基づいた支持があって初めて進歩するものです。誰もがその人らしく生きられる社会の実現のために私たちの考え方を示していきたいと思います。
ヘラルボニー 代表取締役 / Co-CEO 松田崇弥・文登
この度、ヘラルボニーは日本ダウン症協会と協働し「いつか『偏見』も、除去されますように。」をコアメッセージに掲げた意見広告を発表しました。
今回の表明を通じて、過激な意見が届くかもしれません。しかし、なにより危惧しているのは、賛否両論がなにも生まれずに風化していくことです。
これからも医療業界の活発な議論を通じて「ダウン症」や障害のある人に関する様々な医療や制度は急速に進展するでしょう、それは決して否定するものでも止められるものでもありません。
「障害=不幸」という感覚は、社会が抱える障壁や纏う空気です。「偏見」の除去は、技術の力ではなく、人の心にしかできないと信じています。
■STAFF LIST
企画統括:桑山知之(ヘラルボニー)
企画:菊永ふみ(ヘラルボニー)
クリエイティブディレクター/コピーライター:長谷川輝波(電通)
アートディレクター:山口さくら(電通)
コミュニケーションクリエイター:鈴木雄飛、宮本梨世(電通)
エグゼクティブ・クリエイティブディレクター:小布施典孝(電通)
プロデューサー:増原誠一、松江由紀子(電通)
クリエイティブプロデューサー:大聖亜希(電通クリエイティブフォース)
PR:安藤奈穂、佐々木笑美(ヘラルボニー)
法務:玄唯真、齊藤由美(ヘラルボニー)
■世界ダウン症の日とは
2004年に国際ダウン症連合(DSi=DOWN SYNDROME INTERNATIONAL:本部はイギリスのロンドン)が制定し、2006年から「世界ダウン症の日」が始まりました。2012年から国連が国際デーの一つとして、3月21日を「世界ダウン症の日」として制定しました。ダウン症のある人たちとその家族、支援者への理解がより一層深まり、ダウン症のある人たちがその人らしく安心して暮らしていけるように、さまざまな啓発のイベントを通して世界中の人々に訴えていくための日です。
■ヘラルボニー公式オンラインストアにてBUDDY WEEK2025を実施
ヘラルボニーでは3月21日「世界ダウン症の日」と4月2日「世界自閉症啓発デー」を繋ぐ13日間を「BUDDY WEEK」と名付け、毎年ダウン症と自閉症について知っていただく取り組みを実施しています。4年目となる本年は自閉症のある作家・小林泰寛氏をフィーチャー。世界自閉症啓発デーのシンボルカラーである青をテーマに限定商品を展開し、3月15日にオープンした都内初の常設店「 HERALBONY LABORATORY GINZA」にも同作家が在廊します。
https://store.heralbony.jp/pages/buddy-week2025