神奈川県大和市出身。文化服装学院卒業後、27歳でパタゴニアに入社。10年間の勤務を経て、地域おこし協力隊として秋田県に移住。社会福祉法人での経験を経て、2023年にヘラルボニーに入社。岩手事業部シニアマネージャーを経て、2025年1月にISAI PARK コミュニティーマネージャーへ就任。現在は秋田県在住で盛岡本社に勤務。
パタゴニアで10年間のキャリアを積んだ後、地域おこし協力隊として秋田県に移住。その後、社会福祉法人での経験を経て、2023年にヘラルボニーに入社した木村芳兼。
現在はISAI PARK コミュニティーマネージャーとして、盛岡からヘラルボニーの思想とカルチャーを育てる土壌づくりに挑む。彼はなぜヘラルボニーを選び、盛岡という地でどのような未来を描いているのか。その意志に迫った。
盛岡から「新しい福祉のあり方」を提示する
これまでの経歴、ヘラルボニーにおける自身の役割を教えてください。
父親の影響でファッションに興味を持ち、服飾を専門的に学んだ後、27歳でパタゴニア日本支社に入社しました。父が通っていたアウトドアショップで手に取ったカタログから、環境への取り組みを知り、強く惹かれたのがきっかけです。
そこでは、「売る」以上の大切なことを学びました。たとえば、買い物袋を持参していなかったときに受けた環境への配慮についての説明。それを通じて、企業のあり方について新しい視点を得ることができたと感じています。
パタゴニアでの10年間のキャリアを経て、地域コミュニティにより深く関わりたいと考えるようになり、秋田県鹿角市の地域おこし協力隊に。その後、社会福祉法人での経験を経て、2023年にヘラルボニーに入社しました。
現在は岩手事業部のリーダーとして、約15名のメンバーとともに盛岡を拠点とした活動を展開しています。リテール部門や本社ギャラリーのマネジメント、自治体との協働など、さまざまな領域を横断的に。
ヘラルボニーでの仕事を通して成し遂げたい"意志"はどんなことでしょう。
盛岡の地から「新しい福祉のあり方」を提示していくことです。
パタゴニアで学んだのは、理念とカルチャーを日々の行動で体現していくことの大切さ。そして地域おこし協力隊の経験から、地域に根差すからこそ見えてくる課題があることを知りました。
その経験は今のヘラルボニーでの活動に確実につながっています。
一本の糸でつながるように
木村さんがヘラルボニーに転職を決めた理由を聞かせてください。
僕の人生で向き合ってきた命題に、本気で挑戦したかったからです。
人生には、全ての経験が一本の「糸」になってつながる瞬間があると思っていて。幼少期の原体験やこれまで培った経験とスキル、向き合ってきた課題や絶望、悔しさ…全部です。
それが僕の場合、「ヘラルボニーという意思決定」につながったというか。
たとえばパタゴニアでの経験や、地域おこし協力隊として地域の課題に向き合ってきたこと。就労継続支援B型事業所の立ち上げに関わり、働く人たちの月の平均工賃が約1万7000円という現実を目の当たりにして、「何とかしなきゃいけない」と強く感じたこと。
さらに大きな転機となったのは、個人的な経験です。
「個人的な経験」ですか。
大きな転機が、自閉症スペクトラム症の診断を受けた娘の存在です。それは決してネガティブな経験ではなく、子育てに向き合うなかで娘への理解が深まり、障害や福祉への向き合い方も大きく変わりました。
同時に、就労支援の現場で出会った方々のことを考えるようになり、誰もが本当の意味で活躍できる社会をつくるためには、福祉の構造自体を変えていく必要があると強く感じるようになったんです。
そんなとき、コロナ禍でマスクを配布するヘラルボニーの姿が目に止まり、調べていくうちにその理念に強く共感したんです。今思えば、このときが一本の「糸」になってつながった瞬間だったのだと思います。
へラルボニーの思想を岩手盛岡から
ISAI PARK コミュニティーマネージャーとして、どのような未来を描いていますか。
ヘラルボニーの思想やカルチャーを発信し続ける拠点として、リーダーシップを発揮していきたいと考えています。
その意味で、盛岡には重要な意味があると考えているんです。私たちはここから、障害福祉に対する新しい文化や価値観を発信し続ける存在でありたい。そう思っています。
具体的な例を挙げると、2025年春のリニューアルオープンに向けた盛岡カワトク百貨店でのクラウドファンディング。開始からわずか10日で1,000万円を達成できたのは、この地で150年以上にわたって培われてきた市民との信頼関係があってこそだと感じています。
また、異彩を放つ作家たちが1日ストアスタッフを務めたポップアップイベントも盛岡カワトク百貨店で初めて開催しました。作家とお客さまとの自然な出会いの場を創出することで、障害に対する既存の概念を塗り替えていく。そんな試みも始めています。
これらはほんの一部の取り組みですが、岩手盛岡は歴史や文化に敬意を持つ街であり、市民の郷土愛に溢れた街です。さらに言えば、私たちのようなスタートアップ企業の声に耳を傾け、柔軟にアイデアを受け入れてくださったりもする。
そんな岩手盛岡に本社を置くへラルボニーは、めちゃくちゃ幸運だと思いますね。
最後に、木村さんがヘラルボニーで果たしたい目標を教えてください。
繰り返しになりますが、僕のミッションは「岩手にヘラルボニーを体現できる土壌をつくり、カルチャーを育てる」こと。
そのために大切にすべきなのは単に「ヘラルボニーの事業が成長すること」だけじゃない。ヘラルボニーが目指す理念に共感してくれる「理解者」や「同志」を増やしていくことが、何よりも重要だと考えています。
ヘラルボニーの価値観を誠実に体現し、自分の言葉で語れる人間になり、それを周囲に伝播させるような存在になること。どんなに小さな行為や活動だとしても、徐々にその波紋が大きくなることを信じて、全力で取り組んでいきます。
神奈川県大和市出身。文化服装学院卒業後、27歳でパタゴニアに入社。10年間の勤務を経て、地域おこし協力隊として秋田県に移住。社会福祉法人での経験を経て、2023年にヘラルボニーに入社。岩手事業部シニアマネージャーを経て、2025年1月にISAI PARK コミュニティーマネージャーへ就任。現在は秋田県在住で盛岡本社に勤務。