MY ISSUE / 011

娘が私を
この船に乗せてくれた

小野静香 広報室 シニアマネージャー

新卒でサイバーエージェント入社後、女性向けメディアの編集・マーケを経験。子会社の広報部門立ち上げに貢献し、2022年ヘラルボニー入社。広報室・シニアマネージャーとして社内外のコミュニケーションを統括。1児の母。

広報室でシニアマネージャーを務める小野静香。新卒で入社したサイバーエージェントでゲームやWebメディア領域での経験を経て、グループ子会社での広報部門の立ち上げに参画。2020年、第一子の娘に先天性疾患があることがわかったことをきっかけに、障害や福祉に対する当事者意識が芽生えたという。

当時の戸惑いや葛藤、そしてヘラルボニーへジョインする決意に至った心情の変化は「『ちがい』を堂々と、歓迎できる母に」という自身のnoteに詳しく綴っている。「未来は必ず変わるし、変えられる」と力強く語る小野は、どんな思いでヘラルボニーという船に乗り続け、どこに向かおうとしているのだろうか。

障害福祉の境界線を溶かしたい

ヘラルボニーにおける、広報の役割を教えてください。

ヘラルボニーはまだ70名程度(2025年1月現在)のスタートアップ企業ですが、事業内容は多岐にわたります。私が所属する広報室ではIPライセンスを扱うBtoB、BtoCのブランド事業やアート、海外などといった5つの事業部の広報機能に加え、SNS運用も担当しています。事業の拡大とともに広報室の機能や体制も急拡大しています。

現在は、業務委託も含め7名という大所帯になってきました。そのなかで私は主に、ヘラルボニー全体を俯瞰したPRプランの立案・メンバーのマネジメントを担当しています。私が入社した当時は、広報チームとしての組織もなかったので、広報体制そのものの土台づくりも行っていましたね。

入社してから2年。広報責任者としての仕事を振り返ってみて、感じていることを教えてください。

一言でいえば「手触り感」のある仕事ができていると思います。前職でスマートフォンゲームのPMやそれに関する広報を担当をしていた頃は、数値的なKPIを中心に追っていました。もちろんそれも大切な指標なのですが、お客さまと対面する機会があまりなかったんです。

ヘラルボニーでは、お客さまとのウェットなコミュニケーションが溢れているし、日々心が揺さぶられるようなメッセージがシャワーのように多く寄せられます。SNSの発信や言葉一つひとつに手触り感があるのは、やりがいというより、使命感につながっていますね。

もう一つは、アーティストやクリエイターやモデル、俳優の方々など、これまで“障害福祉”というテーマに関わりがなかったように感じていた人たちまでもへラルボニーを通じて、障害のイメージを変えるために関わってくださったこと。お仕事以前に、「プライベートで愛用しています」とか「応援してます」という声をいただくことが増え、それらをきっかけにPR活動やイベント出演のご依頼をさせていただくケースが増えました。

これまで私が憧れの対象として、違う世界の人だととすら思っていた人たちが、自分ごととして障害福祉に向き合い、関わってくれるのがすごく嬉しかった。障害福祉を、“障害福祉コミュニティ”のなかで完結させるのではなく、もっと拓かれた場所にしていきたいと、改めて思えた2年間でした。

後悔はしたくない、その一心だった

ヘラルボニー入社につながる、原体験を教えてください。

2020年に第一子を出産した際、娘に先天性の疾患があることがわかりました。それまでは普通の育休ライフを送り、ママ友たちと楽しく過ごしていたんです。しかし、一気に「自分だけがまったく違う道を進まなくてはいけない」という感覚に陥ってしまって。朝起きて、目の前にいる子どもが可愛いはずなのに、逃げられない現実と向き合っているような感じというか。私自身も数ヶ月、精神科に通うほどひどく落ち込んでいました。

何が自分をここまで苦しめているのか自問自答するなかで「選択肢の少なさ」や、福祉制度の下に「決められた枠のなかで生かされている」ような感覚が苦しさの正体なのではと感じました。選択肢の多い社会、堂々と胸を張って生きてもよい社会を、私の娘が大人になるまでにどうにかつくり上げたい。私自身がそういった価値観を持った自分になりたい。そう思ったんです。

どんなきっかけでヘラルボニーに入社することになったんですか。

娘の先天性疾患を知ってから、障害や福祉に対する当事者意識が生まれ、障害について深く調べていたら、ふと目に飛び込んできたのがへラルボニーでした。障害に対して支援や貢献のスタンスではなくフラットに向き合い、クールなプロダクトやソーシャルアクションに取り組むヘラルボニーの存在は、当時の私にとって希望でした。あと、おそらく採用サイトだったと思うのですが、「社会貢献がしたい人は来ないでください」という代表メッセージにも共感しましたね。

それがヘラルボニーへ入社を決めた理由につながるわけですね。

そうです。これからの人生で私はずっと娘の母親であることは変わらない。前職に復帰して、また同じ仕事を続けることも考えましたが、日常のなかで何度も何度もヘラルボニーのことを思い出し、入社しなかったことをいつか後悔するだろうと思ったんです。「自分もこの船に乗ろう」。そう決意を固め、2022年11月からヘラルボニーにジョインしました。

未来は変わる、変えられる

広報責任者として今後、どのようなチームをつくりたいですか。

常に当事者の立場を想像してコミュニケーションを設計できるチームでありたいと思っています。これから海外展開もより力を入れていく予定ですが、著名な作家やアーティストを巻き込みながら、世の中にサプライズとインパクトを与えていきたい。その意味で、自分たちのチームを「広報」に括ってしまいたくはない。広報にとどまらず、事業やブランドコミュニケーションにも深く入り込みながら、広報としての視点を高めていきたいと考えています。

ヘラルボニーを通して伝えたいこと、実現したいことはありますか。

正直なところ、「世の中を変えたい」といった綺麗事を言うつもりはありません。

まずは自分の家族のため、そして身の回りの人のために時間を使いたい。私という存在や経験を通じて、隣の人の意識から小さな変化が生まれていけばいいなと。もっと自然にお互いの考え方や価値観を交換し合えるような環境をつくりたいし、自分自身そういった社会を生きたい。だからこそ、「それでいいんだ」と思ってもらえるような、お互いの振る舞い方のケーススタディをどんどん世の中に発信していきたいですね。

たとえば私の娘の疾患である染色体異常。そもそも染色体が発見されたのは、つい150年前のことなんですよね。人類の歴史で考えれば、つい最近の出来事。私の娘が成人するまでの15年という時間で、テクノロジーだけでなく考え方そのものも必ず変わるはず。ヘラルボニーもその変化の先頭に一緒に立ち、社会に思想を広げていくお手伝いをしたい。

未来は変えられないと悲観するのではなく、絶対変わるし、変えることができる。私自身、そう強く信じて、この船を前に進めていきます。

小野静香 広報室 シニアマネージャー

新卒でサイバーエージェント入社後、女性向けメディアの編集・マーケを経験。子会社の広報部門立ち上げに貢献し、2022年ヘラルボニー入社。広報室・シニアマネージャーとして社内外のコミュニケーションを統括。1児の母。

MY ISSUE

へラルボニーのメンバーは、多様なイシューを持ち日々の仕事に向き合っています。一人ひとりの原体験や意志は、社会を前進させるポジティブな原動力に変わります。