MY ISSUE / 013

意識変容こそが
私たちの価値

神紀子 ウェルフェア事業部 責任者

新卒で株式会社リクルートに入社し、営業や新規事業推進を経験。30歳の時にフィリピン留学・世界一周を経て、世の中の理不尽や自身のアンコンシャスバイアスに直面したことから、社会課題解決の世界に身を投じることを決意。帰国後、株式会社グロービスに入社、同時にグロービス経営大学院にてMBAを取得。2023年6月、ヘラルボニーのミッションに共感し、ウェルフェアチームの立ち上げと共に入社。新設されたウェルフェアチームにて、新規事業開発を担当。

ヘラルボニーの新規事業である「ウェルフェア事業部」で責任者を務める神紀子。ヘラルボニーの軸である「アート」を使わないアプローチから、マジョリティの意識変容(DE&I研修やイベント)と障害のある方の活躍の場づくりの二つの方向から新規事業の開発を推進している。

ヘラルボニーに入社する以前、障害のある方との接点はまったくなかったという彼女はなぜ、“すべてを捧げる覚悟で”ヘラルボニーに参画することを決めたのか。自身の原体験になったという留学と世界一周を振り返りつつ、ヘラルボニーを通じて実現したい社会を語ってもらった。

原体験はあとからでもつくり出せる

ヘラルボニーにおける仕事内容やミッションを教えてください。

ウェルフェア事業部は「誰もが自分らしく生きられる社会のため、社会構造を変革し、新しい価値観をつくる」ことをミッションに掲げ、マジョリティの意識変容(DE&I研修やイベント)と障害のある方の活躍の場づくりの2軸から新規事業の開発を進めています。

ヘラルボニーの軸である「アート」を使わない新しい事業を開発することが私たちのミッションでもあるため、他の事業部とはやや毛色が違う、ヘラルボニーのネクストチャレンジを担っている部署だと自負しています。

最近では新たに、体感でDE&Iを本質的に学ぶ企業向け研修「DIVERSESSION PROGRAM」を開講。DE&Iが義務感にとどまり、自分ごと化できていない課題を根本から解決することに取り組んでいます。

DIVERSESSION PROGRAMでの活動を通して、参加者からどんな感想をもらいますか?

ありがたいことに「全社員にやってもらいたい」「人として自分のあり方を考え直すきっかけになりました」など、多くのポジティブな感想をいただきます。

ただ、なかにはDE&Iに関して「私には強い原体験がないのですが、研修を受けても大丈夫ですか?」といった声をよくいただくんです。その度に「そんなことは絶対にない」です、と返すようにしています。私自身、ヘラルボニーに入社する前は、障害や福祉にまったく関係のない人生を歩んできました。今思うのは、そうした未経験の状態こそ強みになるし、原点はいくらでも後からつくれるということ。

たとえば私たちが行う「DIVERSESSION PROGRAM(ダイバーセッション・プログラム)」を受講してもらうことで、今まで知らなかった世界の理不尽を体感し、「変えたい」と本気で思ったならそれが原体験になる。ウェルフェア事業部として、これからもそうした原体験をつくり出す役割を担っていきたいですね。

0.1%でも社会を前進させるために

神さんが社会課題に目を向けた原体験があれば教えてください。

一番大きな転換点になったのは、フィリピン留学です。私は「30歳になったら会社を辞めて世界一周しよう」と決めていました。新卒で入社したリクルートで営業リーダーと新規事業推進を経験し、30歳になるタイミングで退社。次に転職することになるグロービスに入社する前に世界一周に行くことにしたんです。

まずは英語を勉強するために行ったのがフィリピンでした。フィリピンに行って、気づかされたのは、生まれた場所によってたくさんの制約があり、そもそも海外旅行に行く選択さえ自由にできない人たちがいること。当たり前のように大学へ入り、リクルートという会社で働けたことを自分の努力の成果だと思っていましたが、本当は生まれた環境に恵まれていただけだったことに気づいたんです。

そこからソーシャルビジネスへの関心がどんどん深まっていき、MBAにもチャレンジすることになります。

ヘラルボニーにはどんなきっかけで入社することになったんですか。

MBAのとある授業でした。「あなたの使命はなんですか?あなたの命を何に使いますか?」と教授に問われたことがあって。その際に自然と自分のなかで「ソーシャルビジネスの世界に身を置く以外の選択肢はない」という思いが沸々と湧き上がっていたんです。

もちろん、日本や世界が抱える問題がすべて私が生きているうちに解決するわけではない。それでも、0.1%でも前進させたい。自分が人生を終えるときに後悔しないため。一歩でもこの社会を前進させたと思えるために、もっとも命を燃やせる環境を探していました。

それがへラルボニーだったんです。

すべての人が、その人らしく

入社から一年半が経過し、今ヘラルボニーに抱いている思いを教えてください。

ソーシャルビジネスとしてのヘラルボニーが一線を画すのは「課題を直接的に定義していない」点だと思います。具体的な課題を定義したうえで、直接的にアプローチして解消しようとする企業や団体はたくさんあります。ただ、世の中の思想や価値観を変えられる企業は多くない。へラルボニーは“社会課題を解決する企業”ではなく、“人々がありのままに暮らせる社会をつくる企業”なんですよね。支援や貢献ではなく、資本主義のなかでビジネスにチャレンジしている姿も、他とは一線を画す存在でした。入社から一年半が経過したいまでも、その印象は変わらないし、むしろ強くなっているほどです。

ヘラルボニーを通して伝えたいこと、実現したいことはありますか。

「正解も不正解もない」、人それぞれがその人らしさを表現し、そのまま生きてつながり、幸せを感じられる場、大袈裟に聞こえるかもしれませんが、本気でそういう社会をつくっていきたいです。障害の有無や年齢も問わない、大人も子どもも自然に混ざり合うような場をつくりたい。

そのため私たちウェルフェア事業部は長い時間軸でこの事業に取り組んでいかなければなりません。少なくとも10年、20年…いやそれ以上かもしれない。何年かかるかわかりませんが、とにかく粘り強く事業を続け、いつか「0.1%、社会が変わったね」と言える未来に立っていたいですね。

神紀子 ウェルフェア事業部 責任者

新卒で株式会社リクルートに入社し、営業や新規事業推進を経験。30歳の時にフィリピン留学・世界一周を経て、世の中の理不尽や自身のアンコンシャスバイアスに直面したことから、社会課題解決の世界に身を投じることを決意。帰国後、株式会社グロービスに入社、同時にグロービス経営大学院にてMBAを取得。2023年6月、ヘラルボニーのミッションに共感し、ウェルフェアチームの立ち上げと共に入社。新設されたウェルフェアチームにて、新規事業開発を担当。

MY ISSUE

へラルボニーのメンバーは、多様なイシューを持ち日々の仕事に向き合っています。一人ひとりの原体験や意志は、社会を前進させるポジティブな原動力に変わります。