アカウント事業部プランナー。大学では映画制作を専攻し、短期インターンを経て2022年4月に入社。タウン事業部(※現在はアカウント事業部と統合)に配属され、建物の内装や町作りプロジェクトに携わる。2023年4月のクリエイティブ局発足に伴い、現職に就任。プランナーとして企画立案からアウトプットの管理まで幅広く担当。JALやJRグループとの大型プロジェクトにも携わる。
ヘラルボニーのアカウント事業部でプランナーを務める大門倫子は、映画学科出身の経験を活かし、障害のイメージを変えるクリエイティブな取り組みをリードしている。知的障害のある兄を持つ経験から、社会の価値観を変える必要性を強く感じ、ヘラルボニーへ入社。施設訪問や企業との協働を通じ、「特性」と「異彩」の関係性について考え直している。
将来的には、障害の有無に関わらず誰もが楽しめる「大人のテーマパーク」の実現も夢見ていると話す大門に、ヘラルボニーでの2年間の成長、そして未来のビジョンについて聞いた。
「特性」が「異彩」になることもあるのだと気づきました
入社から2年が経ち、大門さんのなかで価値観の変化はありましたか。
大門:私は仕事柄、作家が所属する施設に訪問する機会が多く、その度にたくさんの出会いがありました。そのなかで、以前までなら障害による「特性」だと捉えていたものが、その人の「異彩」になる可能性もあるのかもしれない、と視点が変わりました。
私には重度の知的障害を伴う自閉症の兄がいます。これまでなら「特性だから仕方がない」と折り合いをつけていたようなことが、もしかしたら彼のこだわりが「異彩」になることがあるのかもしれない、とものの見方の選択肢が広がったりしている実感があります。
クライアントワークでも変化を感じますか。
大門:企業とのお仕事を通じても、障害のイメージを変えることは依然として難しい問題だと捉えています。でも、ヘラルボニーには「こういうことができたら面白い」という前向きな発想が飛び交う環境があります。マイナスであればあるほど、プラスになった時のインパクトが大きいという考え方は、クリエイティブな思考の賜物だといえるかもしれません。
クライアントとの仕事を通じて、考え方や感じ方の変化が伝搬していく様子を肌で感じる瞬間もあります。とある部署の方々が施設訪問に同行し、作家の創作に関心を持ってくださったり、その経験が他の部署にも広がっていったり。そういう様子を見ると、「チームヘラルボニー」の輪が広がっているのを感じますね。
障害のある兄と、未来へ不安を抱く私。
ヘラルボニーは、希望でした
ヘラルボニーを知ったきっかけを教えてください。
大門:作家の岸田奈美さんが東京パラリンピックのコメンテーターをされていたときに、ヘラルボニーの青いブラウスをお召しになっていて、そこから会社の存在を知りました。
当時、私は芸術学部の映画学科に通う大学生で、コロナ禍で実習がすべて中止になったり、映画制作の資金を貯めたくてもアルバイトもままならなかったりと、苦しい大学生活を送っていました。映像制作会社をメインに就職活動を始めていましたが、どこか自分の本心と違うことを話している気がして、しっくりこない状態が続いていたんです。
就職活動と同時に考えていたのが、障害のある兄の将来や、兄が「自分らしく生きていく方法」でした。福祉関連の仕事も考えましたが、それが「自分のやりたいこと」なのかは迷っていて。
そんな時、ヘラルボニーの考え方に出会い、衝撃を受けました。これからも兄は「支援される側」の存在として生きていく、と思っていた自分の考えが大きく変わりました。好きなことを活かして、その人らしさを考えていく仕事なのだと感じ、ヘラルボニーで働きたいという強い思いが芽生えました。私にとっても、未来に希望を持てるかもしれない存在になったんです。
ヘラルボニーで働くことで、ご家族や当事者家族からの見え方も変わりましたか。
大門:今、この会社でクリエイティブな仕事をしていることは、両親にとっても大きな希望になっていると思います。障害のあるお子さんを持つ多くの家族が同じような悩みを抱えているなかで、私がワクワクしながら働いている姿が、一つの希望になってくれていたらいいな、と願うこともあります。
ヘラルボニーという運動体が、社会から見える当事者家族からの眼差しになっているとも感じています。私たちがワクワクしながら、さまざまな福祉実験を続けていること自体が、将来が良い方向に変わるかもしれないという希望を人々に与えるかもしれない。こういった仕事に関われて、ヘラルボニーの一員として働けることを、私自身も両親も、喜んでいます。
誰もが持つ子ども心を開放する、
「大人のテーマパーク」をつくりたい
ヘラルボニーで今後実現したいことはありますか。
大門:将来的には、社会のなかでヘラルボニーの思想が当たり前に実装されるような場所をつくることを想像しています。いろんな人に話しているのですが、いつか「大人のテーマパーク」のようなコンセプトを持つ空間をつくりたいんですよね。
このテーマパークは、障害の有無に関わらず、誰もが安心して楽しめる場所。たとえば、私の兄は、知能レベルとしては3歳から5歳程度と言われているのですが、見かけは20代の成人男性です。でも、もしかしたら兄はボールプールをはじめ、子どもが楽しむようなアトラクションで心置きなく遊んでみたいのかもしれない。
社会では、大人が子ども心を忘れずに遊ぶ様子に対して、批判的な目が向けられることがありますが、むしろ「子ども心を忘れているのは、私たち大人なのではないか」という視点から、純粋に楽しむことができる場所を提供したいんです。
テーマパークは一つの例ですが、こういった実装を重ねて、社会の「当たり前」を少しずつ変えていきたいと考えています。
映画のような空間ですね。実現できたらきっと考え方が変わりそうです。
大門:今思えば、学生時代に学んだ映画制作の経験が、現在のクリエイティブ業務にも活きているかもしれませんね。企画づくりは脚本を書くことに似ていて、全体のクリエイティブディレクションは映画監督の仕事に通じるものがあります。
映画は総合芸術と呼ばれ、多様な要素を調和させながら一つの作品をつくり上げていきます。同様にヘラルボニーでの仕事も、さまざまな要素を組み合わせ、自分の意図を混ぜながら全体をディレクションしていくプロセスだと感じています。
特定の技術を極めるだけでなく、「思考で作品をつくり上げていく」という点で、現在のプランナーとしての仕事は、映画づくりに似ていますね。大学で学んだことと現在の仕事は、点と点が線になって結びついていると感じています。あの頃描いていた映画制作のかたちとは少し変わりましたが、しっかり夢を実現できるように、丁寧に、そして大胆に歩んでいきます。
アカウント事業部プランナー。大学では映画制作を専攻し、短期インターンを経て2022年4月に入社。タウン事業部(※現在はアカウント事業部と統合)に配属され、建物の内装や町作りプロジェクトに携わる。2023年4月のクリエイティブ局発足に伴い、現職に就任。プランナーとして企画立案からアウトプットの管理まで幅広く担当。JALやJRグループとの大型プロジェクトにも携わる。