MY ISSUE / 008

ヘラルボニーは
アートそのもの

井上貴彦 ブランドディレクター

5歳から10歳までイギリスで過ごし、度重なる転校を経験。新しい環境への適応力を培う。慶應義塾大学SFCで多様な分野に触れ、世界の広さを実感。卒業後、ウェブ制作の仕事を経て、現代アートギャラリーで働き、アートの奥深さを体感。その後、Forbes JAPANの立ち上げ期にジョインし、デジタルメディアやウェブ事業を一から構築。5年半の経験を積んで独立、フリーランスとしてもデジタルメディア事業に携わった後に、ヘラルボニーへ入社。

ヘラルボニーのブランドマネジメントを担う井上貴彦。現代アートギャラリーやメディア業界を経て、現在はヘラルボニーで新たな挑戦に取り組んでいる。井上が考えるヘラルボニーのブランドの本質は「変化できること」。アートを軸に、障害のある方の活躍の場を広げ、社会の多様性と包摂性の向上を目指している。

ブランドの海外展開や新規プロジェクトを通じて、ヘラルボニーを「この時代を象徴するアート作品」として確立させることが彼のビジョンだ。社会に当たり前のように存在し、人々の意識を変えるーーそんな志を持つ井上のアイデンティティと、へラルボニーに描く未来について聞いた。

ヘラルボニーとしてのあり方、
考え方、見え方を一緒に考えています

へラルボニーにおける仕事内容やミッションを教えてください。

井上:私の役割は、ブランドマネジメントに近いものだと考えています。現在は会社内で唯一、事業部に所属していないメンバーとして、ブランドの先々のことを考えたり、ときには新しい挑戦のサポートをしたりもする役回りです。

たとえば、どのようなプロジェクトがありますか。

井上:たとえば、海外展示会の企画や海外マーケティング戦略も仕事の一つですし、会社を横断する枠組みの設計や事業の根幹となるアートデータの整備も今進めている仕事の一つです。直接的かつ短期的に利益を生むものも、そうでないものも両方を担当しながら、ブランド観点で伴走するのが自分の役割だと思っています。目先のことだけにフォーカスせず、企業にとって先々の利益につながるであろうことを見つけ、改善する。これもブランドマネジメントの役割です。

この会社には、社会一般とは異なる
「当たり前」がありますね

ヘラルボニーとの出会いと、入社を決めた理由は何でしたか。

井上:出会いは、Forbes JAPAN在籍時の2019年に遡ります。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」という「世界を変える30歳未満の30人」を表彰するアワードで、ヘラルボニーの松田代表を知りました。その受賞後のパーティーで対話する機会があり、それがはじめての出会いですね。

特に印象深かったのは、ヘラルボニーがアール・ブリュットという分野を扱っていることでした。新しいエネルギーと価値観を作品から感じ、どんどん惹かれていったんです。私は以前、現代アートギャラリーで働いていたこともありますが、明らかに作品の背景やパッションがいわゆる現代アートとは異なり、まさに“異彩”を放っていました。

それからもう一つ。私自身のパーソナルな経験も大きな要因でした。性的指向が男性である私は、数年前に同性のパートナーができました。中学生くらいのときから蓋をしてしまった「本当の自分」とは別に、自分や社会が自動的につくり上げてしまうような「虚像の自分」というものに自覚的になれたんです。

もっと「本当の自分」の生活を大切にしたい、という意欲とともに社会や自分を見つめ直すなかで、ヘラルボニーの価値観が何よりしっくりきたのもあり、新たな挑戦の場として選びました。

入社以降、井上さんのマインドや生きやすさに、変化はありましたか。

井上:ヘラルボニーでは、社会一般の「当たり前」とは異なる「当たり前」が存在し、とても安心できる環境です。自分のアイデンティティを特別に説明する必要もなく、自然に受け入れてくれる。そんな家族のような安心感があります。

ヘラルボニーという会社
そのものがアートです

あらゆる視点からブランドを見てきた井上さんが考える、「ヘラルボニーのブランド」とは何なのでしょうか。

井上:ヘラルボニーのブランドの本質は「変化できること」だと考えています。作家との関わり方、「障害」と社会の隔たり、それらにまつわる課題感などを根底を持ちながら、それを「アート」という表現方法で提示したところに、このブランドの強い軸があります。

常に、障害と社会の間をコミュニケーションし、その行き来を増やすことで、強みを増していく。そして「障害」というイメージからかけ離れた驚きをつくり続けることが、ヘラルボニーにとっての使命ともいえるかもしれません。

今後は、現在進めているフランスでの海外展開をはじめ、さらなるコミュニケーションは増えていくでしょうし、それそのものの価値も増すでしょう。アウトプットにしても、アートだけでないカタチもありえます。それらを通じて「社会が変わらなければいけないポイント」を提示する。手法とメッセージの振れ幅をどんどん大きくしていくことが、ヘラルボニーというブランドの成長と同義だろうと思います。

ヘラルボニーをどのような会社、どのような居場所にしていきたいですか。

井上:私はヘラルボニーを、社会に当たり前のように存在する会社にしたいと考えています。それこそ、空気のように。会社全体のビジョンを私なりに再解釈してみると、歴史のなかで「こんな時代があった」と認識させるくらいの存在になれる会社を目指すといいのでは、と。

ヘラルボニーという言葉が、この時代を象徴する一つのアート作品として認識され、社会に変革をもたらす触媒となる。それが私の願いです。そして、その過程で多くの人々が自分自身の可能性や社会のあり方について考えるきっかけを提供していきたいですね。

井上貴彦 ブランドディレクター

5歳から10歳までイギリスで過ごし、度重なる転校を経験。新しい環境への適応力を培う。慶應義塾大学SFCで多様な分野に触れ、世界の広さを実感。卒業後、ウェブ制作の仕事を経て、現代アートギャラリーで働き、アートの奥深さを体感。その後、Forbes JAPANの立ち上げ期にジョインし、デジタルメディアやウェブ事業を一から構築。5年半の経験を積んで独立、フリーランスとしてもデジタルメディア事業に携わった後に、ヘラルボニーへ入社。

MY ISSUE

へラルボニーのメンバーは、多様なイシューを持ち日々の仕事に向き合っています。一人ひとりの原体験や意志は、社会を前進させるポジティブな原動力に変わります。