MY ISSUE / 003

〝私生きてるなって
思うんです

海野優子 ECマネージャー

ECチームマネージャー。2008年にサイバードに新卒入社後、ザッパラスを経てメルカリに転職。メルカリ在籍中に原発不明がんを患い、車椅子生活となる。その経験を活かし、メルカリの障害者雇用部門を経て、2023年にヘラルボニーに入社。障害当事者の視点を持ちながら、ECの運営やマネジメントに従事している。

ヘラルボニーのECチームマネージャーとして働く海野優子(うみの ゆうこ)。34歳で末期の原発不明がんを患い、現在は車椅子で生活する障害当事者でもある。

ヘラルボニーを「生きている実感」が得られる場所だと語る彼女は、障害当事者としての目線を活かしてECの運営とチームマネジメントに従事する。そんな海野が目指すのは、「誰もが生きやすい社会」の実現だ。彼女の強い意志は、果たしてどこから生まれたのだろうか。

ミッションは、障害のある人の
ストーリーを社会に伝えること

へラルボニーにおける仕事内容やミッションを教えてください。

海野:2023年にヘラルボニーに入社し、ECチームのマネージャーとして、主にECでの販促企画や、SNSやメルマガなどの発信を含む自社コンテンツ、お客さまとのブランドコミュニケーションなどを担当しています。

私たちが販売するのは単なる商品ではなく、障害のある人々の才能と可能性を示すものです。ECの売上を伸ばすことはもちろん、マーケティングやメディア運営を通してそのストーリーをしっかりと伝え、ヘラルボニーの事業成長に貢献していく。それが私のミッションだと認識しています。

海野さんが、ヘラルボニーで成し遂げたいことも聞かせてください。

海野:私がヘラルボニーでの仕事を通して実現したいのは、誰もがありのままにいられて生きやすい社会をつくること。どんな自分も、どんな他者も、受け入れることが当たり前になっている、そんな世界をつくることです。もっと言えば、自分自身や我が子に障害があるとわかった時、絶望したり、障害を理由に夢を諦めたりすることがない世の中にしたい。

資本主義社会においては、「効率」や「生産性」といったわかりやすい“ものさし”を「能力」と見なす傾向がありますよね。でも、人の輝きや才能には、もっと多様な“ものさし”があっていいはず。みんなが“優等生”である必要はない。そのためにも、まずはヘラルボニーが資本主義のなかで成果を出し、いろんな“ものさし”をつくり出していきたいです。

原発不明がんを乗り越え、
障害当事者としての目線を活かす

海野さんが、そんな意志を持つきっかけになった出来事はありますか。

海野:大きな影響を受けているのが、私自身が障害当事者になった経験です。

20代はがむしゃらにキャリアを積み、30代で子どもを産んで、より責任の大きな仕事も任されている……そんな、ごく普通のキャリアプランを思い描いていたんです。

しかし、34歳で第一子を出産した私に告げられたのは、末期の原発がん。その後懸命な治療とリハビリが功を奏して、なんとか一命を取り留めました。でも、これまでの自分には戻れなかった。腫瘍の影響で左足に麻痺が残り、車椅子での生活を余儀なくされたのです。

職場に復帰するも、そこで見えたのは「障害当事者としての苦悩」でした。今まで当たり前に開けていたドアが車椅子だと重くて一人で開けられないとか、これまで考えたこともなかった壁に直面しました。生産性とスピード感を求められる環境のなかで、私一人が弱音を吐くことはできない。むしろ健常者と比べて、自分が“劣った存在”なのではないかと認識してしまったんです。

その後、障害者雇用部門に異動。さまざまな障害、個性を持つ人々を目の当たりにするなかで、仕事において「できないこと」を認める難しさを痛感しました。彼らが持つ才能や個性は、「障害者雇用」の枠組みのなかだけでなく、もっと色々な場所で発揮できないものだろうか。そうして、「障害」だけがDiversity&Inclusionの流れから置き去りになっている社会の構造や障害に対する世間の無理解に疑問を抱くようになりました。

障害当事者として働くようになってから、「障害」を軸に事業展開するヘラルボニーへ。入社のきっかけは何かあったのでしょうか。

海野:もともと、ヘラルボニーには一人の「ファン」として出会ったんです。最初に商品を見た時、「すごく良いものを知ってしまった!」「誰にも教えたくない」という感覚になったのを覚えています。

でも、そんな「憧れ」の会社をキャリアに選ぼうと思ったのは、ヘラルボニーなら私がもっともワクワクする挑戦ができる場所だと思ったからです。

末期がんを患い、一時は死をも間近に感じた私は、「人生の最後に何があったら幸せかな」と考えてみたことがありました。そこで頭に浮かんだのは、「家族と一緒にいられること」、そして「ワクワクする仕事」の2つ。これさえあれば、私は幸せに生きていけるのです。

ヘラルボニーは、障害や福祉という難しくニッチな領域に対して、社会の価値観を大きく変容するほどのインパクトを出せる挑戦を続けています。

障害には人類がより豊かに幸せに生きるためのヒントが眠っているに違いない。私と人類を、もっと進化させてくれるはず。そんな人類の難題に挑むヘラルボニーこそが、私がもっともワクワクできる場所なのだと腹落ちした瞬間でした。

ヘラルボニーは
「生きている実感」を得られる場所

入社から約1年経ちましたが、ヘラルボニーの組織の特徴だと感じる部分はありますか。

海野:大きく2つあります。一つは、「違い」を認めるカルチャーが浸透していること。たとえば私が車椅子で移動する時には「そこに段差があるけど大丈夫?」と教えてくれたり、聴覚障害のある社員に対しても、手話通訳が当たり前のように手配されたり。多様な属性を認め、理解するヘラルボニーの風土が、居心地の良さにつながっているのだと思います。

もう一つは当事者意識の強さですね。事業を前に進めるためには、たしかにスキルや能力などのわかりやすい指標は必要かもしれません。でもそれ以上に、メンバー一人ひとりがヘラルボニーの一員として、ミッションを「自分ごと」化して受け止め、本気で社会を変革しようとしている。そんな組織って、ものすごく強いと思うんですよ。

最後に、海野さんがヘラルボニーで果たしたい目標を教えてください。

海野:ブランドコミュニケーションを担当するものとして、ヘラルボニーの思想や考えをお客さまに丁寧に伝えていく必要があると考えています。私たちが販売しているのは単なる商品ではなく「思想」。SNSや自社メディアなど、デジタル領域だからこそ伝える手段はたくさんあります。テキストやビジュアル、一つひとつから「ヘラルボニーらしさ」を感じていただけるコミュニケーションを実現していきたいですね。

また、ECチームのマネージャーとしては、メンバー一人ひとりと丁寧に対話を重ねていく必要があると思っています。「会社のため」という名目は一度脇に置いて、まずは一人の人間として、何が得意で、どんなことをやりたいのか。本人の個性や才能、意志を引き出し、自発的なパワーに変えていきたいです。そして私自身がヘラルボニーで成長し続けることで「障害を理由に自分の夢ややりたいことを諦めなくいい」ということを世の中に伝えていけたらいいですね。

ヘラルボニーで過ごす毎日は、本当にワクワクに満ちていて、一つひとつの仕事に「生きている実感」を得ながら働いています。これからも「障害」という名の個性を活かして、“へラルボニーのある人生”を楽しみたいですね。

海野優子 ECマネージャー

ECチームマネージャー。2008年にリクルートに新卒入社後、ザッパラスを経てメルカリに転職。メルカリ在籍中に原発不明がんを患い、車椅子生活となる。その経験を活かし、メルカリの障害者雇用部門を経て、2023年にヘラルボニーに入社。障害当事者の視点を持ちながら、ECの運営やマネジメントに従事している。

MY ISSUE

へラルボニーのメンバーは、多様なイシューを持ち日々の仕事に向き合っています。一人ひとりの原体験や意志は、社会を前進させるポジティブな原動力に変わります。